般若心経は六百巻の大般若経のエッセンスをたった266字の珠玉の文字に抽出した大変密度の濃い功徳のあるお経です。
般若心経は分析的・思索的に『空(くう)』を捉えるのではなく、すべてを幻の如きに見て、分析せず、そのままにして「空」と達観することを教えています。
また般若心経には「無」「不」が何度もでてきますが、これは様々な仏教の教理も含めた観念的なものに対する執着を、すべて「無所得」(すべて夢・幻のようなもの)であると否定して、人々の頭から消し去ることで、観念の虜(とりこ)となって苦しむ者を救う功徳があります。
また世間的な善悪を超えた教えであるが故に、後悔の念や罪の意識に苦しむ者を救う大きな功徳があります。苦しみや患いの多い現代社会において心が曇りがちな我々にとって、般若心経は常に心を「生まれたままの白紙」にリセットしてくれる有り難いお経です。
般若心経にでてくる観自在菩薩とは観音様のことです。観音様が「空の智慧」を行じておられる時にという書き出しで始まります。般若心経の全文の現代語訳を掲載致しました。ふり仮名入りですので般若心経を一度唱えてみてください。
般若心経(摩訶般若波羅蜜多心経) |
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観自在菩薩。行深般若波羅蜜多時。 |
観自在菩薩が般若波羅蜜多(空の智慧)を行じている時
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照見五蘊皆空。度一切苦厄。舎利子。 |
五蘊(色・受・想・行・識のことで物質・肉体や感受作用・想念・意思・認識)は皆空であると悟れば、一切の苦厄から救われると照見した。
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色不異空。空不異色。色即是空。空即是色。 |
舎利弗よ、色(物質や肉体)は空(固定した性質がなく実体のないもの)に異ならず、空は色に異ならず、色は即、空であり、空は即、色である。
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受想行識。亦復如是。舎利子。是諸法空相。 |
受・想・行・識(感受作用・想念・意思・認識)もまたまたこのようである。舎利弗よ、このように諸法の相は空であり
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不生不滅。不垢不浄。不増不減。是故空中。 |
生ずることもなく、滅することもなく、汚れとか、浄らかとかの二見はなく、増えるとか減るとかの二見もなく、この故に、空の中に住すれば、
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無色無受想行識。無眼耳鼻舌身意。 |
色もなく、受・相・行・識もなく六根(眼耳鼻舌身意)もなく、
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無色声香味触法。無眼界乃至無意識界。 |
六境(感覚作用の対象)もなく、六識(眼耳鼻舌身意によりに作りだされる認識)もなく、
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無無明。亦無無明尽。乃至無老死。 |
無明もなく、また無明が尽きることもなく、もしくは老死もなく、
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亦無老死尽。無苦集滅道。無智亦無得。 |
また、老死の尽きることもなく、苦集滅道の四諦もない。智慧ということも智慧を得るということもない。
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以無所得故。菩提薩埵。依般若波羅蜜多故。 |
何故なら、所得ということもないからである。菩薩は般若波羅蜜多(空の智慧)の故に、
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心無罣礙。無罣礙故。無有恐怖。 |
心にとどこおりがなく、とどこおりがない故に、恐怖がなく
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遠離一切顛倒夢想。究竟涅槃。三世諸仏。 |
一切の転倒した妄想を遠ざかり離れ、涅槃を究める。三世の諸仏は、
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依般若波羅蜜多故。得阿耨多羅三藐三菩提。 |
般若波羅蜜多(空の智慧)の故に、さとりを得ている。
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故知般若波羅蜜多。是大神呪。是大明呪。 |
故に、般若波羅蜜多(空の智慧)は、大神呪であり、大明呪であり、
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是無上呪。是無等等呪。能除一切苦。 |
無上呪である。無等等呪であり、(不思議で、光明があり、無上で等しいもののない呪文である)、一切の苦を除くことができるものであることを知る。
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真実不虚。故説般若波羅蜜多呪。即説呪曰。 |
それは真実であり、虚(そらごと)ではない。故に般若波羅蜜多(空の智慧)の呪文を説くのであるが、今、ここに説けば、呪文にいわく、
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羯諦羯諦。波羅羯諦。波羅僧羯諦。 |
「羯諦羯諦。波羅羯諦。波羅僧羯諦。
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菩提薩婆訶。般若心経。 |
菩提薩婆訶。」 以上が般若心経である。
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